ある学徒の手記
株式会社トミーウォーカー運営の学園伝綺PBW『シルバーレイン』のキャラクター視点の手記。
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DATE: 2007/01/04(木)   CATEGORY: SS
2007年・元旦の出来事
 ―2007年元旦。比留間家本邸。
「お久しぶりです。そして、あけましておめでとうございます、父上」
「うむ」
 この日、我らが比留間・イドは実に数ヶ月ぶりに実の父親、比留間・岩鉄と対面した。
 共に和服にての正装。流麗な動作で丁寧に頭を下げ、新年の挨拶を交わす。
「おーい、二人ともぉ、お堅いぞぉ~、にゃはははぁ!!」
 そんな緊張した静寂を一撃でぶち壊す笑い声。
 イドの実母にして一族の異端、比留間・アリーヌの乱入である。
 既にたんまりと酒を飲んだのか、着物も乱れていわば大惨事の様相を呈している。
「「………」」
 沈痛な面持ちで互いを見やる父と娘。どちらが先に彼女を注意しようかと機会を譲り合うが、
 今回は娘のイドが口を開く事にした。
「お母様…ばあやの手を借りないと着付けが出来ないのに、そういうのは困ります…」
「ん~、なんでぇイドちゃんよぉ~。ジャポンの正月はブレイコーなんでしょ~?」
 微妙にフランス語の発音を残したまま返すアリーヌ。これはひどい。
「アリーヌ。気持ちはわかるが、頼むからしっかりしてくれ…。何しろ…」
 何しろ、そこまで言いかけて岩鉄は言いよどむ。それはイドも同じ心境なのか、視線を落とす。
「…んー、まぁねぇ」
 二人の顔を見て、アリーヌも急に神妙な顔つきになる。

―イドの家では、正月に本家、分家、一族郎党が集い顔をあわせる、という習わしとなっているが。
―武家華族としての伝統としがらみ。そして。
―現在の比留間グループのもたらす財と名声にとらわれたその他大勢の分家筋にとって。
―日本人ではない比留間・アリーヌ、そしてその娘であるイドの存在は穏やかではなかった。
―加えて、比留間・イドは『女』。。
―『跡継ぎ問題』。それに伴う醜い利権争いが、どうして起こらないだろうか?

「ご主人様、準備整いましてございます」
 家族の重たい沈黙を、万能乳母『ばあや』が破る。
「む…ばあやか。承知した、すぐに行く。アリーヌの着付けの直しを頼む」
「はい、かしこまりました」
 イドは静かに立ち上がり、父の後に続いた。

 ―比留間家本邸。大広間にて
 久留間家。山吹家。五十嵐家。芝村家。岩本家etc…。
 こんなにいたのかと思うほどの人数が、全員正装で畳の広間で正座している。
「我が家族たちよ、よく集まってくれた」
 上座に座すは比留間・岩鉄。その両脇の座布団を母と娘がそれぞれ占める。
 きーんと耳鳴りがしそうな程の静寂。全員が無言で岩鉄に頭を下げ、
 アリーヌとイドがそれに応えて頭を下げる。
 そして最後に、現在の一族の長である岩鉄が頭を下げた。

「新年の門出を祝い、乾杯!!」
 その後も粛々と挨拶の儀は進み、
 やがで食事の時間となり、華やかな宴の席と広間が変貌を遂げる。
「それはそうと、兄上よ…」
 比留間・岩鉄の実弟、久留間(旧姓:比留間)・鉄夫が口を開く。
 ついにきたか。イドは内心そんな事を思いながら、箸を休める。
 他の者たちもそれに気がついたのか、一斉に一族の長と、その弟の会話に耳を傾ける。
「そろそろ、『跡継ぎ』について考えてはいかがですかな?」
 しばしの静寂。
「何を言い出すかと思えば…。そんな時期でもあるまい」
「そうはいきませぬ。これは分家の総意にてなれば…」
 久留間が口の端を歪めてニィ、と笑う。悪意のある微笑みだ。
(「こいつ、いつの間に根回しを…」)
 さっと周囲を見回す。他の家の者達は、
 岩鉄の視線が来るとすぐに視線を外して食事しているフリをした。
「兄上には、今だ跡継ぎが生まれておりませぬ。どうでしょう? 我が息子に比留間の名を…」
「ご心配には及びませぬ」
 鈴のように鳴り響く声。比留間・イドだ。岩鉄、アリーヌが驚いて互いを見る。
「心配無用、とは…?」
 あからさまな侮蔑の視線をイドに投げかける久留間。
「跡継ぎについては、比留間の名を背負うにふさわしき殿方を、婿として招きまする」
「我が息子では、不足であると?」
 遠まわしに己が息子を馬鹿にされ、顔を引きつらせる久留間。涼しい顔をしてイドはその視線を受け流す。
 話題にされている久留間の息子といえば、事の成り行きをただうろたえながら眺めているだけである。
 久留間の息子をちらと見た後、イドは恭しく頭を下げてこう言った。
「恐れながら」
「思い上がるなよ混血がぁっっっっ!!!!!」
 久留間は手にしていた徳利を、イドの頭に投げつけた。陶器の割れる音が広間に響く。
「止めろ、鉄夫!!」
「黙れ!! そも異人の血が混じる事こそが、
 古来より大和の国にあった比留間の一族にはあってはならぬ、由々しき事態!!
 異人の女とその娘がこの場にいること事態が、許されざる事であろうが!!」
 アリーヌは無表情のまま顔を伏せ、ぎりと奥歯をかみ締める。
「鉄夫…それ以上の暴言は許さんぞ」
 獣が牙をむくような表情で、実弟を睨みすえる岩鉄。今にも飛び掛りそうである。
「ふん、皆が思っている事を代弁したまで。
 かような女にたぶらかされた兄上も、さてはて一族を束ねるに相応しいかどう…」
 
 ―パンッ

 言いかけたところで、久留間の視界が突然揺れた。
「え…?」
「ひぃぃぃぃっっ…!!」
 分家筋の誰とも知れぬ女性の悲鳴が上がる。
「お、親父ぃ、耳! 耳ぃぃぃ!!!」
 久留間の息子の上ずった声が広間に響く。
「な…ぁ……?」
 耳、そう言われて手で確認しようとすると、そこには、何も。
 じわりとした熱が、頭の横に広がっていく。
「ひ…!」
 床には自分の左耳が転がり。手の平には、べったりと紅い液体が付着していた。
「…」
 詠唱兵器『逆鱗』である。
 比留間イドは依然として正座したままではあるが、間違いなく逆鱗を投擲したのだ。
「今日は元日…。めでたき日なれば」
 比留間イドは。
「忘れておりました、『お年玉』をつかまつりました…」
 攻撃的な笑みを浮かべた。
 恐怖による絶対の静寂。久留間のうめき声だけが広間に響く。
「なるほど…」
 比留間・岩鉄が牙を剥いて笑う。
「それは私も失念していた」
 比留間の主がパンパン、と手を叩くと、
 音も立てずに万能乳母『ばあや』が廊下から広間に入ってきた。その手には、『裁縫道具』。
「ばあやよ、戯れの過ぎた愚弟が怪我をしてしまったらしい。『手当て』を頼む」
「かしこまりました…」
 もちろん、麻酔などはない。

 ―比留間家一族、今年も安泰にて候

賀正!

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COMMENT

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● 比留間の家には龍が潜む
比留間の中の人 | URL | 2007/01/04(木) 17:12 [EDIT]
正月早々恐ろしい話になったと思います。
● 伊達にして返すべし
香の中の人 | URL | 2007/01/04(木) 18:17 [EDIT]
御美事に御座います先生。
● 出来ておる喃…!
田吾作 | URL | 2007/01/04(木) 18:26 [EDIT]
まこと死狂い、家を背負って立つ武士(もののふ)なり。
御美事に御座います。

あと、分家筋に山吹さんとか五十嵐さんが居るのにニヤリんぐ。
● その話を聞いた狸のしたこと
| URL | 2007/01/04(木) 21:17 [EDIT]
イド、ちょっと道場破りしてくる
(片手には久留間の住所が書いてある紙が…)
● 種ぇ………
鳳凰堂の中の人 | URL | 2007/01/04(木) 22:21 [EDIT]
なーんて言い出しそうに無いご立派なお父上でありますこと。
● 返信
比留間 | URL | 2007/01/05(金) 22:56 [EDIT]
>香の中の人さん
しかと、そぎ落としました。

>田吾作さん
五十嵐先輩とは直接の面識はありませんが、話に聞いた事はあります。
素行不良の生徒だそうです。けしからんです。

山吹家については…ちょっとよくわかりません。

>狢先輩
Σ 後日、謎の襲撃事件があったとかどうとか聞きましたが…。
犯人は、狢先輩ですか。

…。…。いえ、ありがとうございます。

>鳳凰堂の中の人さん
指もちゃんと5本です。(←?

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