ある学徒の手記
株式会社トミーウォーカー運営の学園伝綺PBW『シルバーレイン』のキャラクター視点の手記。
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DATE: 2006/10/22(日)   CATEGORY: SS
絶望の天敵
『てつのしょうねんと たいようのおんなのこの おはなし』
―あるところに ひとりのおとこのこが いました。
―おとこのこは かなしくて かなしくて ずっとないていました。
―ずっとずっと ないていたので、
 やがて おとこのこは こころが てつになってしまいました。
―もう かなしくは ありません。
―でも からだも だんだんと てつになっていきます。
―かなしくは ありません。
―でも。

―さあ かおを あげて。
―ひとりのおんなのこ は いいました。
―ひるには たいようが よるには ほし が かがやいている。
―あきらめては いけない。
―こころを てつにしては いけない。
―それは かなしい つよさ。
―それでは やみに まけてしまう。
―ひとりではだめでも ふたりなら きっとだいじょうぶ。
―ふたりは てをつなぎ そらを みあげました

―さあ これから ふたりの たたかいが はじまります。
―けつまつは だれにも わかりません。
―めでたし めでたし。

―――――
「…よし、結社に行こう」
 放課後の鐘が響く空の下、我らが戦士、比留間・イドはビシッと襟を正し、
 かの倶楽部に向かって歩を進める。…が、そこへ。
「あらー、イドちゃん久しぶりー」
「!!?」
 青天の霹靂。何の脈絡もなしに、比留間の耳にぽややんとした優しい声が入ってくる。
「お、お母様…」
 絵本作家にして能力者、イドの母親、比留間・アリーヌ、突然の乱入である。

―――――
「んー、ごめんなさいね。突然呼び出しちゃって」
「いえ…おかまいなく」
 近くの適当な喫茶店に入り、何気ない会話を交わす母と娘。
 アリーヌは完全に顔立ちからスタイルまでフランス人のそれであったが、
 日本語は信じられないほどに流暢だった。
「しかし、なんでまたこちらへ…?」
「んー、気分?」
 机に額をぶつけて突っ伏すイド。
「…。父上がまた泣きますよ」
「いいの、いいのー。ガンテツにはちゃんと、後でよしよししに行くから。にゃははは!」
「はぁ…」
 どこか間の抜けた返事をしてしまう比留間。いつもそうだ。
 あまり面識が多いわけではないが、イドにとって、どうにもこの人は苦手なのだ。
「あはは、イドもますますガンテツに似てきたわねー。
 そんな難しい顔してると、眉間にシワ増えるわよ?」
「…おかまいなく」
 なんともはや。血が繋がっているとは思えないほど違う気質を備えた二人は、
 それでも親子という事か、何だかんだでとりとめのない会話を楽しんでいる。

「あー、そうそう、イド?」
「はい?」
「あなた、もうゴーストと戦ったの?」
 急に真面目な話題を振られ、一瞬躊躇するイド。だがすぐに顔を引き締め。
「はい。ですが問題ありません。完勝でした」
 そう返した。どこか誇らしげに、胸を張るように。
 今思えば、ほめてもらいたかったのか。
「…。そう」
 だが、そんなイドが見たのは、悲しそうに微笑む母親の姿。
 何故? わからなかった。そんな娘の心境を察してか、アリーヌが口を開く。
「いい、イド?

 強くなるという事は、全てを許せるようになるという事よ。
 相手を殺すだけが全てじゃないわ」
「は、はぁ…」
 戸惑うイド。
「…まあ、ゴースト相手には説得が通じないのが現状だけど

 憎しみだけで、怒りだけで立ち向かってはダメよ? じゃないと…」

 自分が『ゴースト』になってしまうかも? そう、母親は言葉を結んだ。
「…」
 かつて戦った、己の虚像の顔がちらつく。
「能力者の中には、暗い過去を背負った人も多いから…。
 そういう動機で戦う能力者も少なくないのよね。

 相手どころか、自分さえも殺してしまいかねない『いびつな』強さは危険だわ」
 いつの間にか、そこには気の抜けた母はおらず。
「ねえ、イド。もしあなたの身近に、そんな人がいたら…」
 いつの間にか、そこには大地の守り手であるかのような威厳をたたえた女がいた。

「あなたが、その人の闇を殺しなさい。
 我らの拳は、その一撃、その為にこそある」
「了解…!」
 娘の返事に、母は満足げに微笑んだ。
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● 登場人物補足
比留間の中の人 | URL | 2006/10/22(日) 02:01 [EDIT]
名前:比留間・アリーヌ
性別:女
国籍:フランス

職業:絵本作家 兼 絶望の天敵
<解説>
1990年代に戦った世代の能力者。
今で言うところの魔剣士×ゾンビハンター。
あまりに殺し方が上手かった為、
味方からも『ゴーストではないか?』と疑われ、恐れらた過去がある。

現在は絵本を作って人(特に能力者)の『心の闇』を殺す事を生業にしている。

大きな爺 | URL | 2006/10/22(日) 02:16 [EDIT]
御母堂殿ですか・・・きれいなお方じゃのう。
しかし良い事を言いなさる。勉強になるのう。

| URL | 2006/10/22(日) 03:24 [EDIT]
うげ、苦手そうな人物だな。
だいたい、心に闇を持っていない人間のほうが少ないし
闇なんて飲み込む前に飲む込むものだといっても理解してもらえなさそうだもんなぁ

まぁでも、この親にしてこの子ありて感じだよなぁ

鳳凰堂の中の人 | URL | 2006/10/25(水) 11:05 [EDIT]
うわー、上辺だけならそっくりさんだけど根底で南極と北極くらい差がありそうな人ですねー。
私、絶対会わないようにしましょう~(汗)

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