ある学徒の手記
株式会社トミーウォーカー運営の学園伝綺PBW『シルバーレイン』のキャラクター視点の手記。
DATE: --/--/--(--)   CATEGORY: スポンサー広告
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
page top
DATE: 2006/08/24(木)   CATEGORY: SS
戦術の原型
 ―乳母が嫌いだった。残酷なくらいに強くて正論を述べるから。

 目の覚めるような掌底 。
 齢10になる比留間一族本家が長女、比留間イドは老婆の一撃で4、5m程ぶっ飛んだ。

『ばあや』と呼ばれる老婆は呼吸を整え、うずくまったまま立ち上がろうとしないイドを静かに一喝する。
「お嬢様、苦しくなってからが訓練です。苦しくない訓練は、訓練ではございません」
「痛い‥もうやだ。‥‥もういやだぁぁぁっ!」
 少女は立ち上がろうとせず、その場で泣き出した。
 無理もないか。幼い体と心には、あまりにその訓練は苛烈すぎた。

 だが。
「苦しさを考える事それよりも、苦しさから逃げた己の醜さを恥なさいませ」
 質実剛健、常勝不敗を旨とする比留間の一族の長女たるものが、弱音を吐くことなど許されなかった。
「っ‥‥っ‥‥。ばあやは‥わたしの事がきらいなんだっ!」
「否、断じて否。お嬢様を心よりお慕い申し上げております」
 間をおかずの即答。冗談でも嘘でもないと、その瞳が語っていた。

「じゃあ何で‥‥っこんなにひどいことするのっ!?」
「何も教えずに放っておく事の方が、よっぽど酷い事であると、ばあやは思いますぞ?」
「‥‥‥っ」
 あきれるほどに正しい回答。幼心にも納得するほかなかった。
 そりゃ子供に何も教えない大人の方が、残酷に決まっているのだから。

「わたしは、ばあやみたいに武術の才能がない‥‥」
「お嬢様、本当の強さというものは、『技』ではないのです」
「え‥‥」
 その言葉に驚き、イドがばあやを見上げる。

「目に映る全てを利用して、『流れ』を作り上げる事にこそ本領が。
 大河の流れこそが我らにして、我らの技は最後の一撃のそのために、『流れ』を作る事にあるのです」
「ばあやの言っている事は難しくてわからないよ‥‥‥」
 首をかしげるイドに思わず老婆は微笑む。そして一言添えて、彼女を優しく抱き上げた。

「攻撃を組み立てなさいませ。相手の選択肢を削るのです」
「‥‥うん」

 その言葉こそが、イドが今でも守っている戦術の基本骨子である。
スポンサーサイト
[ TB*0 | CO*0 ] page top

COMMENT

 管理者にだけ表示を許可する

TRACK BACK
TB*URL
Copyright © ある学徒の手記. all rights reserved. ページの先頭へ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。