ある学徒の手記
株式会社トミーウォーカー運営の学園伝綺PBW『シルバーレイン』のキャラクター視点の手記。
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DATE: 2007/08/21(火)   CATEGORY: SS
セメントと『 』 ―本編―
「イドラ、あなたは帰って!!」
「い、いやだっ!」
比留間・イド(b06623)イドラ(b28384)による不毛な姉妹喧嘩はゴーストタウンについても終わらなかった。
やれやれとマイト・ミツルギ(b08065)はため息をつき、口を開く。
「仕方ない。今回も同行させるべきと判断する」
「しかし…! …っ!?」
言いかけたところで、イドは何かに気がついて急に辺りを見回し、懐からカードを取り出す。
「そうだ、やっと気がついたか?」
マイトは既に起動を完了していた。斬鎧剣を両手に握り締め、剣先を地面に添え置きながら天を仰ぐ。
「…Damn it」
満ちた月を背景に、何かの…いや人間のシルエットがぼんやりと佇む。
影


「…」
イドの目が大きく開く。
「…」
マイトの中で、かつてくらった一撃の記憶が蘇る。
「…」
イドラは、何がなんだか理解できなかった。

「“イドォォォォぉぉぉぉぉぉ―ッッッッ!!!!”」
比留間・イドは肉食獣のような叫び声と共に、コンクリートの地面を爆裂させながら廃ビルの壁を疾走し、“イド”に飛び掛った。
「な!? 待て比留…」
マイトが言い終える間もなく、“イド”はゆらりと一瞬動いて何かを大量に飛ばしてきた。
「ッ!!!?」
イドは手首と腕を捻り、布槍で飛んできた攻撃を弾く。飛翔の勢いは全て殺され、自由落下してマイトたちのいる場所へと叩き落された。

「比留間!」
「問題なし…!」
「比留間!」
「今度は負けません!!」
「違う馬鹿! 見ろッ!!」
「!?」
はっ、と正気を取り戻したイドが後ろを振り向く。
「ご、ごめんおねえちゃん…。わたし…やられちゃったよ…」
「イドラ!?」
イドラは、太ももを抑えてその場にへたり込んでいる。明らかに顔色が悪い。
「逆鱗の毒だ」
マイトは掴んで止めた逆鱗をイドの目の前に差し出す。
「一度帰還して、イドラに治療を受けさせるべきと…」
判断する。そう言いかけたが、マイトは舌打ちして自分の言葉を中断した。
「今回は、あいつ一人と言うわけではないのか」
ゴーストの足音が周囲に響く。いつの間にか囲まれたと言う事か。
「…。逃げられるかどうかは、かなり怪しくなってきましたね」
「ご、ごめんなさい…」
しゅんと小さくなるイドラの頭に、ぽんと姉の手がのる。
「謝る必要のない場面で、謝ることはありません」
まるで大地の母のような優しい声だった。イドラは、はいと頷く。
イドはそれに満足したように微笑むと、すぐに表情を引き締めてマイトの方に向き直った。
「マイト。“イド”を頼みます」
「…。何?」
「マイトは“イド”を。私とイドラはこのゴースト達を片付けます」
腑に落ちない、そんな表情のマイトを察してか、更にイドは言葉を続ける。

「本来は、私が再度立ち向かうべき相手なのはわかっています。
 ですが…」
少し照れくさそうに、だが青い太陽を瞳に宿した少女はキッパリと言い放った。
「私は妹を守る方を優先したい」
「おねえちゃん…」
マイトは苦笑するしかなかった。
「問題ない。元より…」
そして。
「あれには、借りがあるからな」
次の瞬間には鮫のように笑った。


 ―廃ビル内
「…」
絶讐を握ったマイトは、月明かりしか差し込まない廃墟の中をじりじりと進む。
割れた窓ガラス、意味不明の落書き、壊れた時計、
転がっている注射器、使い終わった点滴袋。
ヒビの入った鏡…に映る人影。
「むッ!!?」
「シャ…ハ!!!」
闇の中で光がきらめいた瞬間、空を裂く音がマイトの耳を掠めた。
「…っく」
「あっははは。掠った掠ったぁ♪」
聞きなれた、だが全く異質な声が闇の中から響く。
「“イド”ッッ!!」
再度きらめく光。絶讐と柱を盾にマイトは身を守る。
「久しぶりぃ、マイトぉ~」
「貴様、何故ここに…!」
「別にどうでもいいじゃん、そんなの」
声だけのやり取り。
“イド”は攻撃した後に移動しているのか、足音が廃ビル内に反響する。
「ただ、蘇ったからには…」
「前と同じように成り代わるつもりか、今の比留間を殺して」
「そそ♪」
「俺達が黙っていると思うか?」
「世界結界がうまく働けば、私は完全に入れ替われるかもしれない。
 それこそ、あんたらが『気がつけない程』完璧に。

 試す価値は…十分だと思わ、ないッ!!?」
瞬間、マイトの視界に“イド”の顔が飛び込んできた。
「ッ!!」
「ハァァッッ!!」
龍尾脚で胴を薙ぎ、龍顎拳でマイトの顔面を柱に叩きつける。
絶讐を振りぬいた頃には、“イド”はとっくに闇の中へと逃げ込んでいた。
「あっははは! 遅い遅い♪」
「すばしっこさは相変わらずというわけか…」
口から漏れた血を袖で拭い、マイトは辺りの闇を注視する。
「そんなにのんびりしてる暇ないと思うけど。
 そろそろ逆鱗の毒がいい感じに回ってきたんじゃないのぉ~?」
狂ったような笑い後がこだまする。
「…ク」
マイトが笑みをこぼす。
「確かにそうだな」
「…。何笑ってんの? 頭に毒が回ったのかしら?」
「いや? 幸いにもそこまでじゃあない」
否、笑みではない。牙を剥いたのだ。
「だが、時間をかけられないのも事実だ。だから…」
斬鎧剣『絶讐』の動力炉が回転数を上げ、
けたたましい音を立てながら周囲の詠唱銀を取り込んでいく。

同時に、マイト自身も酸素を大量に取り込んで己の筋肉に総動員令をかける。
「少し、地形を戦いやすいようにさせてもらうぞ」
「ッ!!!?」
稲光のような速度で振りぬかれた鉄塊は。

「な…」

空を裂き常識を引き裂き。

「あ…」

ビルを支える柱をぶっ飛ばした。

「何ぃぃぃぃぃッッ!!!?」
周囲を砂煙と振動と轟音が包み込む。
「こいつ…なんてデタラメを…ッッ!!」
じゃり、と不破の御釼が一歩前に出る。
「柱が光を遮り、戦いをお前の有利にするというのなら…俺は」
サングラスが月光を反射する。真紅のコートを羽織った怪物は野獣のような笑みを浮かべて前進してきた。
「……。それを斬り拓いて行くのみだ」
 ―突進して、斬る。
「ッ!!?」
飛びのいた“イド”。また一つ柱が砕け散る。

 ―突進して、潰す。
「こい…つッ!!」
上に跳んだ“イド”を追いかけ、天井ごとえぐるように叩き潰す。

 ―突進して、叩き斬る。
二つ三つ四つと柱を綺麗に絶讐が駆け抜けてゆく。
「や…」

 ―突進して、叩き潰すッッッ!!!!
「やめろぉぉぉぉぉッッッ!!!!」


「おねえちゃん…!」
「…彼は、ビルの解体でもする気なんですかね」
先ほどから轟音と振動を感じている比留間の姉妹は、
異常に砂塵をもくもくとあげているビルにため息をついた。
「まあ…私たちは、私たちの戦いを続けましょう」
「うん…じゃない、はい!」


「はッ…はッ……は…っ」
「…。ビルを解体せずにはすんだな」
ホールのように広くなった廃墟の中、埃まみれになったマイトはガラスの砕けた窓から月を臨んだ。
「正気か…おまえ…。
 ビルを支えている柱を崩していったら…どうなるか!!」
「その時は、天井をぶち壊して脱出するだけだ」
「~~~~~ッ!!」
苛立ちでひどく顔を歪ませた“イド”は、さっと両手を振った。
次の瞬間、両腕には。
「リボルバーガントレットか…」
禍々しい曲線的なデザインのガントレットが“イド”の両手に装着されていた。
「来るか」
「もう遊びは飽きたわ」
「そうか」
マイトは絶讐をカードの中に戻す。
「…?」
「俺もそろそろ終わりにするつもりだった」
マイトがファイティングポーズをとって構えた。たまらず吹き出す“イド”。
「あははは!!! あんた馬鹿じゃないの!?
 昔一発であたしにのめされたのを忘れたのかしら!?」
“イド”の笑い声がこだまする。マイトは眉一つ動かさず、口を開く。

「…勘違いされるのも業腹と判断する。先に言っておくぞ」
マイトの拳に、炎が宿る。
“イド”の笑い声が止まった。

「『マイト・ミツルギの』拳は。あんな物では」
マイトの瞳に、炎が宿る。
“イド”の顔から油断が消えた。

「ない」
マイトの魂に、炎が宿る。
“イド”は目を見開いた。

拳を限界まで引き絞る。
かの不死鳥が暴れ狂い、いななくようにゆらめく。
「ゆくぞ」
「…そ、今まで遊んでたわけじゃないみたいね」
いつものニヤけ顔は完全になくなっていた。
流麗な動作で、“イド”は掌をかざして構える。

「天上天下比留間式防衛術。“イド”」
「ただのマイトだ」
空気がきんと張り詰める。外の戦いの音が、ひどく遠い。

壊れた柱、転がっている瓦礫、意味不明の落書き、
割れた窓ガラス、冷えるような満月。

かたや不死鳥。かたや龍。
二つのシルエットが、切り絵のように対峙する。

 ―カラン
瓦礫の崩れる音。それが合図。
「うぉおおおおおおぉぉぉっっっっ!!!!」
「あああああああぁぁぁぁっっっっ!!!!」
交差する絶技。


“イド”のどてっ腹を、マイトの拳が突き抜けた。
ラストショット
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COMMENT

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● エピローグは
比留間の中の人 | URL | 2007/08/21(火) 20:57 [EDIT]
マイトの中の人氏のブログ、
『えにしのまき』に掲載されるはずです。

あとはまかせたー!

鳩@神の子 | URL | 2007/08/21(火) 22:23 [EDIT]
鮫のようにわらった

ただその一言に惹かれてコメントをしてしまいました。
『本物』は全てを凌駕する。
熱いものをみせていただきました。
● ぅ、お、ぉ、お、ぉ、う
縁巻 | URL | 2007/08/21(火) 23:00 [EDIT]
有り難すぎて血が吐けそうだ…!
何ですかこの主人公!セメントの分際で!151cmの分際で!!!
(ふしゅー(冷却)…ああ畜生格好いいな!(再点火

しかし能力者の戦闘ってのは偉い事になりますな。
ビルを解体の一節で戸愚呂(弟)を思い出したのは俺だけではない筈。
いや見事見事。

よ、よし、頑張ってエピローグ書くよ…!なるべくハートフルに。
● 笑みとは
鳳凰堂の中の人 | URL | 2007/08/22(水) 04:23 [EDIT]
本来獣が牙を剥く行為が原点であるとか………
ところで鮫って獣だっけ?

それはそうとして熱いですね!!
暑い夏さえぶっ飛ばす熱いシナリオに感動ですよ!!

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